この男、偽装カレシにつき
「覚えておくといいよ」


大野センパイは自販機の取り出し口から缶を拾い上げると、棒立ちしたままの私に手渡してくれる。


「ちなみに俺はこっちなんだけど」


そう言って大野センパイは無糖のコーヒーのボタンを押しながら、「俺のなんてどうでもいいか」と笑った。


「そんなことない…。
ばっちり覚えました!」


あんな女タラシはともかく。
大野センパイが無糖ってことだけは、キャパの小さい私の脳内にしっかり刻み付けなければ。


大野センパイは、真っ赤になって首を振る私を見て微笑むと。
その場で缶を開けてコーヒーを口に含んだ。
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