王子様は囚われ王女に恋をする
その血を見た瞬間、カイルの怒りが頂点に達した。

「いますぐアリシアを離せ。でないとこの場で貴様を殺す」

「お前に渡すくらいなら、王女はこの手で殺してやる」

アリシアの首に剣を突き立てようとしたトーマスを背後にいたメルディアンの兵士が突き飛ばした。

トーマスがバランスを崩した瞬間、カイルがアリシアを引き寄せ、ブラッドがトーマスを取り押さえる。

「カイル様…」


ずっと焦がれていた胸に抱かれ、アリシアの瞳に涙があふれる。

「アリシア様」

まわりにいたメルディアンの兵士が一斉に膝をつく。

「いままでのご無礼をお許しください」

頭をたれる兵士たちに、アリシアは言った。

「あなた方は悪くありません。何も知らなかったのですから」

アリシアの言葉に兵士たちの目にも光るものが見える。

メルディアンの兵士たちをブラッドに任せ、カイルはアリシアを抱いたまま外へ出た。


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