王子様は囚われ王女に恋をする
「カイル王子が?」

アリシアとイライザが顔を見合わせた時
扉が開いた。

部屋に入ってくるその姿を見た瞬間
アリシアは動けなくなった。

深い青地に金の飾りの付いた服を着て正装したカイル王子に
不覚にも目を奪われてしまったからだ。

身動き一つとれない彼女の前まで歩いてくると
カイルは少し目を細めた。

「そのドレス、よく似合ってる」

まっすぐな瞳に思わずうつむいたアリシアに
彼は手を差し出した。

「さあ、行こう。今日は僕がエスコートする」

「え…?」

カイルは手を取ると広間へ向かって歩き出す。

「待って。どうして捕虜の私の相手をあなたが…」

「何か問題でも?」

涼しい顔で聞かれてアリシアは腹が立ってきた。

「問題あるでしょ?!
どうして捕虜を舞踏会なんかに連れ出すの?
しかもどうしてあなたが相手なのっ?」

一気にまくしたてる彼女を見て
カイルは小さく笑う。

「連れて行きたいから連れて行く。
エスコートしたいからするんだ」

「答えになってないわ」

その手を振りほどこうとしたものの
がっちりと掴まれていてびくともしない。

ジタバタするアリシアを見て、ふいにカイルが立ち止まった。

「アリシア」

突然呼び捨てにされて思考が停止する。

「舞踏会についたら、僕のことはカイルと呼ぶように。
“様”や“王子”は不要だ」

「えっ?」

「僕も君をアリシアと呼ぶから」

アリシアは訳がわからないまま
舞踏会が行われる広間へ足を踏み入れた。
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