王子様は囚われ王女に恋をする
王子の登場に誰もが自然と道を開ける。

そこを悠然と歩いて王と王妃の待つ場所へと
カイルはアリシアを連れて行った。

「父上。母上。アリシアを連れてきました」

「アリシア、よく来たね」

優しい声に顔を上げると、懐かしい2人がそこにいた。

「王様、王妃様…」

幸せだったころの記憶がよみがえり
胸がいっぱいになる。

「よく無事で…」

王妃は潤んだ瞳でアリシアを見つめると
彼女の手を取った。

「会いたかったわ」

私も、と言いかけて
アリシアはその言葉を飲み込む。

(ここは敵国で私は捕虜だ)

うつむいて感情を殺した。

「お久しぶりです。王妃様」

「心配していたのよ。でもこうして会えて本当によかった」

「…はい」

目をあわせずに答える彼女の態度に気を悪くすることもなく
王と王妃はカイルに言った。

「アリシア王女が不自由しないように
よく面倒をみてあげなさい」

「カイル、お願いね」

どこまでも優しい2人の言葉にも
アリシアのかたくなな心は閉じたままだった。
 


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