王子様は囚われ王女に恋をする
うつむいたまま顔を上げないアリシア。

髪の毛を結っているせいで
白いうなじが自然とカイルの目に入る。

ドレスを着た姿を見たとき
カイルは思わず立ち止まりそうになった。

正装した姿を見たのは初めてで
予想以上の輝きに目を奪われてしまう。

それでも、アリシアの態度はかたくなで
王と王妃を前にしてもそれは変わらなかった。

事情を知っている2人は
心配そうにアリシアを見つめていた。

「さあ、行こう」

いつまでも顔をあげようとしない彼女を促して
王と王妃に会釈するとそこから連れ出した。

広間の中央では曲にあわせて皆が踊っていた。

「僕たちも踊ろう」

カイルはアリシアを半ば強引に踊りの輪の中心に連れていき
その細い腰を抱き寄せる。

「っちょっと、カイル様っ?」

怒ったようにカイルを見上げるアリシア。

「カイル、だろ?」

「カイル様!」

「カイルと呼ばないと離さないよ」

そう言って、さらに強く抱きしめる。

「やっ…」

腕の中でジタバタと抵抗するアリシアを見て
カイルは溜め息をついた。

(やれやれ、強情なお姫様だ)

仕方なくアリシアの耳元に口を寄せてささやいた。

「アリシア、君は捕虜だろ。
カイルと呼ぶんだ。これは命令だよ」

ビクンと体を小さく震わせたアリシアは
急におとなしくなった。

「さあ、呼ぶんだ」

観念したようにその唇が小さく動く。

「…カ…イル」

「もう一度」

「…カイル」

「それでいい」

名前を呼ばれても、さらさら解放する気もなかったカイルは
そのまま曲に合わせて踊り続ける。

「呼んだら離すって言ったじゃないっ」

「呼ばないと離さないと言っただけだ。離すとは言ってない」

その言葉にアリシアは息をのむ。

「…うそつきっ」

「何とでもどうぞ」

顔を赤くして怒って睨んでくるアリシアに
カイルは思わず笑みがこぼれた。

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