失恋ショコラ【短】
「人としてはともかく……作家としては、とても素晴らしい方だと思います」


前半は精一杯オブラートに包んで、正直な気持ちを伝えた。


実際、作家としての篠原は、担当者としても一読者としてもすごく尊敬しているから…。


人間性を疑いたくなる本性さえ知らなければ、あたしは一生“葛城龍司”と言う人間を尊敬していただろうとすら思う。


真実を知った今は、“篠原櫂”への憧れを無くす事は出来ないままでも、さすがに“葛城龍司”への尊敬の念なんて欠片(カケラ)も無いけど…。


「……おい、それだけか?」


程なくして、篠原があたしをまじまじと見ながら訊いた。


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