失恋ショコラ【短】
「雛子」


ドキリ、心臓が跳ね上がる。


不意打ちで名前を呼び捨てにするなんて、ずるいと思う。


「なぁ、雛子」


そんなあたしの心の中を見透かすように、篠原が耳元で低く囁いた。


いよいよ、本格的に心臓が騒ぎ出す。


それに呼応(コオウ)するように、胸の奥がキュンキュンと鳴き始めた。


そしてそんなあたしに、篠原がとどめの一言を落とした。


「俺を好きになれよ」


耳元で囁かれた、誘惑を孕んだ甘い声。


「……っ!」


そこに与えられた熱のせいで一瞬で熱くなった体が、不本意にも固まってしまった。


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