失恋ショコラ【短】
「雛子……」


さっきの情事を思い出させるような、低くて甘い声音。


“雛子”なんて、今日まで一度も呼んだ事が無かったくせに…。


ずるい……


あたしは体が震えそうになるのを堪えて、必死に口を開いた。


「かっ、からかわないで下さいっ……!」


だけど…


あたしが平静を装おえない程パニックになっている事を、篠原はきっとわかっている。


「俺は……」


だから…


「お前が、俺の事を好きになり始めてると思うけど」


あたしの芯を溶かしてしまうような酷く甘い声で、そんな囁きをそっと落としたのだろう…。


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