絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
 レジカウンターから担当売り場までの長い道のりの途中、客とすれ違う度に挨拶をし、小さく会釈をしながら、徐々に仕事に頭を切り替えていく。店内月間売上金額トップ3という位置だけは、今月も確実に自分の物にしておかなければならならい。
 香月が本社に栄転をし、自分が現場に残されるというわけではない。自分はここで必要だから、ここでプライドを持って仕事をしていくだけで、それが、香月より見劣りするとか、ましてや噂の彼氏とやらに比べてどうだとか、そういうことは全く問題ではない。
 しっかりと自分を見つめなおし、自分がやるべきことを、見失わないように生きて行く。それが、今の自分にとって一番大切なことなのだ。
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