2年3組乙女事情
「あ、山村さん達もイケメンが気になっちゃった感じ?」
「う、うん。まぁ。榎本さんの声、良く響くからさ。ついね」
楽しそうに話しかけてくる榎本さんに、苦笑いを返す。
「あっ、穂高先生じゃない?」
雨宮さんの言葉につられて、4人一緒に窓の外へ視線を移した。
校門にもたれてぐるぐると校舎に視線を送る井上律に、ゆっくりと穂高先生が近づいていくのが見える。
授業参観でもないのにきちんとスーツを着こなした穂高先生と井上律のバランスが大人と子どもの壁みたいに感じられて、少しだけ眉間に力が入った。
「本当だ!タイプは違うけど、イケメンが並ぶと絵になるねー」
「榎本さん、さっきからそればっかだよ?」
「大事なことでしょ?テンション上がるしさ」
「うん、それは私も否定しない」
亜希帆ちゃんと榎本さんの会話を聞きながら、あたしは何となく窓から視線を外した。
先生まで来ちゃったってことは、ヤバいよね?
内申が悪くなったら?
おばさんに呼び出されたら?
変な噂でも広まったら?
考え出したらキリがない“悪影響”に体が思わず固まる。
そんなあたしを見て何か感じたのか、雨宮さんがすっと窓から離れて、耳元で静かに口を開いた。
「気のせいだったらごめん。あの人、知り合い?」