2年3組乙女事情

ほぼヒヨコ。


それってつまり、卵ってことよね?



しかも今、間違って“オレ”って言ったよね?


さっきまで“ボク”だったのに。



どこが大丈夫なんだか……。



苦笑いをするあたしなんてお構いなしに、ヒヨコみたいな髪の彼は笑顔をまとい続けてる。



でも、そんな少し頼りないヒヨコさんのおかげか、さっきまでのぐるぐるした気持ちは、心なしか軽くなった気がする。



「ねぇ、その実験って、いつなら大丈夫なんですか?」


「え?いつでも良いですよ!もちろん」


「じゃあ……今からでも?」


「今から!?」



明らかにびっくりした表情のヒヨコさんに、思わず笑う。



近くを通るカップルが、パンフレットを配ってる美容師さんとにこやかに話すあたしを見て、怪訝そうな顔をした。


そんな空気さえ今は、何となく楽しい。



「予約、いっぱいですか?」



「いや、平日だし大丈夫だとは思うんですけど……一応、電話してもらえます?予約がルールなんで」


「はい! ありがとうございます!」



いきおいよく頭を下げてから、ケータイを取り出した。


パンフレットに書いてある番号を打ち込むあたしに、ヒヨコさんが静かに口を開く。



「あ、一応、服部指名でお願いします」


「服部?」

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