主婦だって恋をする
皆が散策から戻ると、幾分顔色の良くなった夫が事情を説明して私たちは先にタクシーで旅館に向かうことになった。
チェックインの予定時間よりかなり早く着いた私と夫に、上品な着物を着こなした仲居さんは嫌な顔一つせずに応対してくれた。
「お部屋はこちらになります」
案内された和室は川に面していて、さらさら流れる水音が聞こえる。
窓の向こうには鮮やかな緑の風景が広がっていて情緒たっぷりの部屋だった。
「お布団、敷かせて頂きますね」
具合の悪い夫のために仲居さんは一組の布団を用意してくれた。
「ごゆっくりどうぞ……」
丁寧にお辞儀して出て行く彼女を見送ると、私は窓際に近づいて外を眺めた。