主婦だって恋をする

「俺たちは、映画の主人公じゃない。ここでこうしてることは、俺と成美しか知らない」



そう言って彼女に口づける。



「客観視する必要なんてないよ。俺のこと、好きなんでしょ……?」


ブラウスのボタンを一つずつ外しながら問いかけると、成美は潤んだ瞳で俺を見つめ、頷いた。



「……俺も好き。その気持ちだけでいいじゃん。どうせ、観客は俺たちだけなんだから」



彼女を床に押し倒し、赤みを帯びた耳に唇を寄せた。



「……他人に見せられないこといっぱいしよう?」



今日はバイトはパス……店長、ごめんなさい。


心の中で言い終わると、少しだけ残っていた理性は泡のようにぱちんと弾けて消えた。


< 85 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop