純情、恋情、にぶんのいち!
▽
▽
翌日の放課後、わたしはやっぱりどうしてもまっすぐ家に帰ることができず、化学準備室に向かっていた。
わたしの上履きにはもう、この場所を目指してしまうことがインプットされている。
先生は怒るかもしれない。
それとも、今度こそ本当に、そんなものは通り越して、嫌われてしまうかもしれない。
自分で扉の前まで来ておいて、ノックをためらっていると、突然ドアがおもいきり開いた。
「……おや」
眼鏡ありの先生だ。
なにか言いたげな瞳に、静かに見下ろされて、わたしも目を逸らすことができない。
人気のない廊下に沈黙が伸びていく。
長い、長い、それを経て、最初に口を開いたのは先生のほうだった。
「……きょうは、なにか用がありましたか」
あまりにも他人行儀な言葉。
それに自分勝手に傷ついてしまい、押し黙っていると、ふう、上から息を吐く声が聞こえた。
「きみは本物のお馬鹿さんなんですか?」
「……だって、」
「“彼”があれほど言ったのに」
「だって……先生、」
なにかを言いたいはずなのに、次の言葉がいっこうに見つからない。
先生がそっと体を横にずらし、それから、わたしに背を向けて室内に戻っていく。
入ってもいい、と、背中が言ってくれている。
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翌日の放課後、わたしはやっぱりどうしてもまっすぐ家に帰ることができず、化学準備室に向かっていた。
わたしの上履きにはもう、この場所を目指してしまうことがインプットされている。
先生は怒るかもしれない。
それとも、今度こそ本当に、そんなものは通り越して、嫌われてしまうかもしれない。
自分で扉の前まで来ておいて、ノックをためらっていると、突然ドアがおもいきり開いた。
「……おや」
眼鏡ありの先生だ。
なにか言いたげな瞳に、静かに見下ろされて、わたしも目を逸らすことができない。
人気のない廊下に沈黙が伸びていく。
長い、長い、それを経て、最初に口を開いたのは先生のほうだった。
「……きょうは、なにか用がありましたか」
あまりにも他人行儀な言葉。
それに自分勝手に傷ついてしまい、押し黙っていると、ふう、上から息を吐く声が聞こえた。
「きみは本物のお馬鹿さんなんですか?」
「……だって、」
「“彼”があれほど言ったのに」
「だって……先生、」
なにかを言いたいはずなのに、次の言葉がいっこうに見つからない。
先生がそっと体を横にずらし、それから、わたしに背を向けて室内に戻っていく。
入ってもいい、と、背中が言ってくれている。