純情、恋情、にぶんのいち!
先生が明らかな動揺を見せたところを、もしかしたらはじめて見たかもしれない。
「わがままも駄々っ子も通用しないなら、
……わたしは先生を、脅迫します」
眼鏡を外した先生が、最初に会ったとき、ためらいもせずわたしにそうしたように。
「あのっ、わたし、ほんとのほんとに、本気ですからね!」
「……はい。冗談なんて思っていませんよ」
わかりました、
と、先生は言った。
たしかに、言った。
「僕も、彼も、きみのことを少々見くびっていたようですね」
ヨウ先生のきれいな指によって、見とれるほどに美しいしぐさで、ゆっくりと眼鏡が外されていく。
「やれるもんなら、やってみろ」
同じ声質なのに、ぜんぜん違う声色で、先生はささやいた。
わたしの耳元に、そっとくちびるを寄せて。
「っえ……、せんせ」
「これだけで委縮するやつがいっちょ前に脅迫なんかしてんじゃねえよ」
「べっ……べつに、これくらい平気、――」
ヘイキのキ、
たぶん、最後まで発音できていなかったと思う。