純情、恋情、にぶんのいち!


ここは、先生の、膝の、上。

向きあう姿勢で、息がかかるほど近くに先生の顔があるから、うまく呼吸することができない。


「なに目逸らしてんだよ」

「ち、近い……です」

「これだからガキは」


先生の左手がゆっくりわたしの腰に回されていく。

触れそうで触れない、絶妙な距離にあるくちびるが、恥ずかしい。もどかしい。

じんわり、太ももに汗をかいている。


……まるで全身が心臓になったみたい。


わたしに“脅迫”をされたヨウ先生は、あの日から、化学準備室にふたりきりでいる放課後だけは、わたしをまるで恋人みたいに扱ってくれるようになった。

好きだ、とか、つきあおう、とか、そういうことは言われていないけど。


先生にとってはこういうのも全部、口止め料、のつもりなんだと思う。

そうだとわかっていても、どうにもどきどきしてしまうのは、好きなのだから致し方のないことである。


「さ……さーちゃんが、」

「ん?」

「さーちゃんが、ヤス先輩に、クリスマス誘われたらしいんです」


黙っていたら爆発しそうだった。

沈黙を破るために口にした話題は、情けないほど突拍子もないことで、だけどきょう、先生にいちばん話したかったこと。

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