純情、恋情、にぶんのいち!
とても、きれいな女の人だと思う。
だからこそ、恥ずかしそうな、申し訳なさそうな微笑みが嫌で、なにも答えることができなかった。
これじゃただの感じ悪いコだ。
彼女が助手席に乗ったことを確かめると、先生の視線がわたしに移った。
――ああ、もしかしたら、ダメかも。
「……ふたりで、帰りますよね?」
反射的にそう感じて、なぜか、ぜんぜんそうしたくないはずなのに、心とは裏腹にへらりと笑っていた。
「というか、ふたりで帰ってください。なんだかタダゴトじゃなさそうだし……」
「……野村、」
名前では、呼んでくれないんですね。
彼女のことはマリカと呼ぶのに。
彼女は先生を、陽平と呼ぶのに。
これじゃ、まるで、わたしのほうが邪魔者みたい、です。
「……っじゃあ、さよーなら!」
悪いがきょうはひとりで帰ってくれ、と。先生の口から聞くのがこわかった。
だからといって、3人でいる車内も、それはそれで想像したくないほどに恐ろしい。
だって、先生のなかに、彼女のほうをひとりで帰すという選択肢はないのでしょう。
それなのに、先生、これはあまりにも残酷です。
ぐい、と手首を掴まれたかと思ったら、そのまま引き寄せられる。
「……馬鹿が。いいから、乗れ」
「…………っ、」
「ごめんな。きょうは後部座席で我慢してくれ」
そんなふうに言われたら、ごめん、なんて謝られたら、うなずくしかないじゃないか。