純情、恋情、にぶんのいち!
ひたすらとーご先輩の後をついていくと、やがて前方にヤス先輩を見つけた。
「泰人、ごめん、遅くなって」
「冬吾が遅刻するなんてめずらしーじゃん」
モデルさんかと思った。
チャコールグレーのチェスターコートがとても似合う。
学校で見るよりも少しだけ派手なピアスが両耳に揺れていて、シンプルなコートに、よく映えている。
「あれ、チィちゃん? って、なにその荷物。旅行にでも行くの?」
わたしの姿を確認するなり、いきなり地雷を踏みぬいたヤス先輩に、とーご先輩が隣で苦笑を漏らした。
「……ほんと、どしたの。もしかして泣いてた?」
自然と目じりに添えられた親指。
覗きこんでくるその顔は、本当に心配してくれているように見えるのに、どこか色っぽさがあって、目が離せなくなってしまう。
「っ、泰人!」
「なーんだよ。冬吾が泣かせたんじゃねーの?」
「おれじゃねーよ!」
「ほんとかなあ。冬吾、これまでにも無自覚にたくさんの女の子のこと泣かせてきたからなあ」
「それ、この世で泰人にだけは言われたくないからな」
軽口を叩きあうふたりはすごく“いつも通り”で、思わず笑ってしまった。
さっきまであんなに悲しかったのに、おかしいな。
悲しいのは、消えていないはずなのに、おかしいな。