純情、恋情、にぶんのいち!
戸惑いつつ、やらなければやらないで、なにをされるかわかったものじゃないので、言われたとおり作業に取りかかった。
そうしているうちに、隣でヨウ先生もいっしょにファイルの整理をし始めた。
「……あの、先生」
ついに意を決し、声を発したのは、小一時間かけてやっとファイルの山をやっつけたころだった。
いつのまにやら作業に没頭しており、ずっと黙っていたところをいきなりしゃべったから、少しだけかすれた音になってしまった。
「はい」
「あの……、いったいどっちが“本物”なんですか?」
こんなド直球でしか訊ねられない、おバカな自分に、本当にうんざりする。
それでも先生は手を止め、いつも通りの丁寧な動作で、わたしのほうを見てくれた。
窓から差し込む夕日が逆光になっているから、顔がよく見えない。
「……どちらも本物ですよ」
先生はこれまでにないほど静かに、かしこまって、そう言った。
「うそ。だって、ぜんぜん違う、いまの先生と、きのうの先生……」
「違うのは当然です。僕と彼とは別の人格なんですから」
言っている意味がイマイチよくわからない。
それでも、これ以上バカだと思われるのが嫌で、その言葉を必死に咀嚼しようとしていると、先生がふっと笑うのが聞こえた。
「きのうも、二重人格、と言ったでしょう。これは、単なる性格の問題ではなく、病気です」
「え……びょう、」
「――解離性同一性障害、というのをご存じないですか?」