純情、恋情、にぶんのいち!


「……て、あれ、千笑ちゃん!」

「と、と……と!」

「ははっ、なんで『と』しか言わないの」


いいえ。テンパって口が動いてくれないだけで、

とーご先輩、
と、心のなかではすでに2万回くらい唱えております。


「ていうか、ホントごめん、ぶつかって。怪我してない?」

「いえ! あの! ぶつかっていったのはわたしのほうでしたので! すみません、とーご先輩のほうは、お怪我は……」

「おれは大丈夫。それにおれもめちゃくちゃよそ見してたんだよ。ほんとにごめんな」


バナナスムージーがトレーの上に戻ってくる。

そうしてくれている間にも、とーご先輩は本当に申し訳なさそうに眉を下げていて、こっちのほうが申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。


「飲み物も無事そうでよかった」

「あの、本当にありがとうございましたっ! とーご先輩のウルトラミラクルキャッチで……」

「なに? ウルトラミラクル?」


とーご先輩はいつも、空気と楽しく遊んでいるみたいに、ははっと軽快に笑う。


憧れの、芸能人みたいに思ってきた先輩が、こんな至近距離で、わたしのような平凡な存在に笑いかけてくれている。

これはやはり、何度経験してみても、信じられない奇跡が起こっているとしか思えないのである。

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