ほんの少しの勇気があれば
「アカリは、大沢くんのこと好きなの?」
理沙にそう聞かれたのは、中3の冬。
バレンタインデー1週間前の放課後だった。
「え?……何、突然」
あまりにも突然の理沙の言葉に、思わず、
“うん、好きだよ”
と言ってしまいそうになった。
「私、アカリがライバルだったら大沢くんのこと諦めようかな。なんて思ってたから」
って、少しだけ笑って、真っ直ぐこっちを見てくる理沙の目は真剣で、冗談なんかじゃないんだって分かった。
理沙は、私が大沢くんのことを好きだって知ってるの?
いつから分かってたの?
それとも、ただの理沙の勘?
なんて答えるべき?
本当の自分の気持ち言うべきなの?
それとも隠すべきなの?
どちらを言っても理沙を裏切ることになるような、そんな気がして、
「私は……」
そこから後の言葉が出てこない。