ほんの少しの勇気があれば

“スパッ!”


ボールがリングに入った瞬間、

「ナイスシューッ!」

思わず口に出していた。



静かな体育館に、私の呟きはよく聞こえたらしく、その声を聞いた大沢くんは、驚いた表情で私を見た。


見つめ合った視線は、絡み合ったまま、離すことが出来なくて、


「遠、藤……さん」

そう言った大沢くんの声にドキンッと大きく胸の音が鳴った。



私の名前、知ってくれていたんだ



1年の頃から同じクラスだったけれど、会話らしい会話なんてしたことなんてないし、ましてや、彼から話しかけられたことなんて一度もなかったから。


だから、胸の高鳴りは、驚きの所為だと言い聞かす。


「あっ、……忘れ物して取りに来たの。邪魔、したよね?」


こんな所、見ちゃいけなかったよね?

見られたくなかったよね。


おそるおそる聞いた私に、ふっと、とてもやわらかい笑顔を見せてくれた。


その笑顔に、心臓が大きく飛び跳ねた。


「邪魔じゃないけど、ちょい、恥ずかしいかな」


そう言って、また優しく笑った大沢くんに、ドキドキが止まらなくなった。


あなたのこの笑顔に恋をした。

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