惑溺
「起きてたんだ?」
部屋に入って来た彼は、窓際に立つ私の姿を見て目を細めた。
「ねぇ、リョウ……。最初から知ってたの?」
私が聡史と付き合ってるって。
自分の担任の彼女だって。
初めから全て知っていたの……?
震える私の声に、リョウは静かに微笑んだ。
「……知ってたよ」
薄暗い部屋の中、私を見据えたまま着ていたジャケットを脱ぎ捨てる。
そうして近づいてくる彼のその姿に、ぞくぞくした。
「酔っぱらった客が忘れていった手帳を見たら、中に担任の名前が書いてあって驚いた。
自分の担任がどんな女と付き合ってんのか興味がわいた。
だから部屋に呼んだ」
ただそれだけ。そう素っ気なく言いながら、リョウはゆっくりと私に近づいてきた。