惑溺
『昨日具合悪そうだったから心配して電話したんだけど、起こしちゃったな』
あぁ、そうだ。
昨日聡史と二人でホテルのブライダルフェアに行って……
なんて、電話越しの聡史の声を聞きながら昨日の事を思いだして、はっとして目を開けた。
慌てて体を起こし周りを見回すと、そこはもちろんリョウの部屋。
カーテンの閉められた薄暗い寝室。乱れたベッド。床の上に脱ぎ捨てられた私の服。裸同然の恰好の私。
電話越しの聡史にその姿が見えるはずもないのに、思わず足元のシーツを引き寄せて体を隠した。
そして恐る恐る隣に眠っているはずの彼の姿を探したけれど、そこにリョウはいなかった。
耳を澄ますと、遠くからかすかに水音が聞こえた。
あぁよかった。シャワーあびてるんだ。
ほっとして大きく息を吐くと
『由佳?まだ具合悪いのか?』
いつまでも返事をしない私を心配した聡史が声をかけてきた。