惑溺
「ねぇリョウ。どうしてバーテンダーなんてやってるの?」
その背中に向かってずっと疑問に思っていたことをぶつけると
「どうして?」
その質問をくだらないとでもいうように、リョウは微かに目を細めて聞き返した。
「だってまだ未成年でしょ?
未成年がバーで働くなんてまずいんじゃないの?」
「ああ、別に。アルコールを提供するだけなら未成年でも問題ない」
「問題ないって。高校生なんだから、学校とか……」
法律では問題なくても、校則で許されるはずない。
レストランや居酒屋の店員ならまだしも、バーテンダーなんて。
私がそう言いかけると、リョウは首を軽く傾け私の顔を覗き込んで小さく笑った。
「先生に言いつける?
いいよ。別に言いたかったら言えばいい」
平然とそう言いながら寝室を出ていくリョウに、私も立ち上がり後を追った。