惑溺
「あ、私そろそろお茶入れてきます」
時計を見るとちょうど三時で、盛り上がる沙織と木本さんにそう言って立ち上がった。
「由佳、あたしも手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。
木本さんコーヒーでいいですよね?」
「ああ、ありがとう」
逃げるようにフロアを後にして誰もいない給湯室に入ると、冷たいシンクに手をついて大きく息を吐き出した。
なにやってるんだろう私。
嘘をついてばかりだ。
ため息をついてばかりだ。
こんな事、もうやめなきゃってわかってるのに。
リョウとはもう会っちゃダメだって、わかってるのに。