惑溺
 
クローゼットの奥でその箱を見つけた瞬間、胸の中に苦しいような甘いような、なんとも言えない想いが込み上げてきた。

薄らとホコリを被ったその箱の蓋をそっと開ける。
中に入っていたのは、たくさんの思い出達。

数年前の年賀状の束
友達の披露宴の座席表
昔撮った写真

そして、
まるで何かを封印するように幾重にも包まれた
―――1冊の手帳。


その中に何が書かれているのか、包みを開けなくても思い出せる。
それは、封印しようとしても決して忘れることのできない、苦い思い出……。

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