惑溺
  
「あの時止めてたら、きっと由佳はこんなに泣かないですんだよね。
友達ならちゃんと話し聞けばよかったって、本当はずっと後悔してたんだ。
……ごめんね」

そんな、博美が謝る事なんてないのに。
私は博美への裏切りだって自覚しながら、リョウの所へと通っていた本当に卑怯で愚かな女なのに。

自分が情けなくて涙が出た。
リョウとの後ろめたい関係に酔って、何も考えられなくなっていた馬鹿な自分。
私、何も見えてなかった。
何も見ようとしていなかった。

「ごめんね、博美。私馬鹿だった」

「もー、しつこい!だから謝るなってば」

鼻をすする私を、博美はテーブルの下で思いっきり蹴った。

「いた……ッ!」

その容赦のない蹴りに思わず笑うと、博美も目を合わせて優しく笑った。

「でも、由佳がリョウくんともう会わないって決めて安心した」
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