惑溺
 
「俺さ、由佳が浮気をしてるかもって気が付いて、はじめてちゃんと由佳の事を好きになったのかもしれない」

心の中の重い物を吐き出すようにそう言った聡史。
その意味が分からずに、私は眉をひそめて隣に座る彼の顔を見た。

「正直焦ってたんだ。
もともと結婚願望強い方で、付き合う時は好きって感情より結婚後の生活を考えてさ、その条件に合う女の子ばっかりを選んでた気がする。
もちろん、由佳と付き合いたいって思ったのもそう」

会社の先輩の木本さんの披露宴で、私を見かけて紹介してほしいっていった聡史。
木本さんから私の性格について色々聞いていたのかもしれない。
派手好きでも、気が強くもない、どちらかというと堅実なタイプ。
それはきっと聡史の求める結婚の条件と、ちょうどうまくあってたんだろう。

なんとなく、それは私も気が付いていた。
聡史が欲しいのは愛する人ではなくて、結婚する相手なんだろうなって。

< 238 / 507 >

この作品をシェア

pagetop