惑溺

「えー、別にずるくないんじゃない?
聡史さんが友達としてでいいからって言ったんでしょ?」

明るく笑う博美に、思わず肩の力が抜けた。
いいのかな。これで。
間違ってないのかな……。

「それにさぁ。
リョウくんとも聡史さんとも一気に別れてひとりっきりになったら、由佳またフラフラして悪い男に捕まりそうだもん」

博美は私をからかうように意地悪に言った。

「そんな事ないもん!もう悪い男なんて……」



悪い男……

そう言った瞬間、甦る黒い瞳。
長めの髪の間から私を見下ろすその冷たい視線を思い出して、胸が痛んだ。


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