惑溺
「そっか。よかったじゃん」
その時の事を私が話し終わると、ずっと黙って聞いていた博美はそう言って笑った。
安心したように肩を下ろした博美の暖かい笑顔に、私は戸惑いながら俯いた。
「よかった、のかな……」
責められる事もなく、浮気を許してもらった私。
その上聡史と友達としてこれからも一緒にいるなんて。
「なんかずるいよね」
きちんとケジメをつけて、きっぱり聡史と別れた方がよかったんじゃ……。
なんて考えては、あの時の聡史の震える冷たい指先を思い出した。
あの時頷いてしまった私は、やっぱり優柔不断で弱い女だと思う。