惑溺

私は思わず耳を塞いで叫んでいた。

「由佳?どうした?」

向かいに座る心配そうな聡史の顔を見て、はっとした。

「あ、あの……」

視線を泳がせながら、必死に取り繕う言葉を探す。

「あの、そんな生徒の込み入った話を他人にしちゃ、まずいんじゃない……?」

なんとか口から出た私の言葉を聞いて、聡史は微かに口角を上げて悲しそうに笑った。

「他人?」

賑やかなダイニングバーで向かい合った私達。

「そっか、他人かぁ……。
俺は恋人に仕事の愚痴を聞いてもらってるつもりだったんだけどな」

きっと私達もこの賑やかな風景の一部、
端から見れば、なんの変鉄もない恋人同士に見えてる。

だけど……

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