惑溺
 


やめて……。


思わずこぼれそうになる声に口を抑えた。


やめて、やめて……!

どうして、そんな
私を混乱させる事をするの?

動揺する私を見るのが、そんなに楽しいの?


愛なんて、ないのに。
私の事なんて、なんとも思ってないくせに。




リョウの強引なキス
熱い吐息
逞しい体
乱暴で、でも優しい腕
黒髪の間から私を見下ろす黒い瞳
鼓膜を震わす低く艶のある声

身体中に、あんなにも必死になって忘れようとしていたはずのリョウの感覚が蘇って、足が震えた。

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