惑溺


夕暮れと共に降りだした雪に、窓から見える夜の街は、うっすらと白く染められていた。
ぼんやりと煙るような白い街並みは、暗い深海に沈む、人から見捨てられた巨大な船のようだ。




「由佳?」

ひとり薄暗い部屋で、床にちらばった服を拾い集め身に着けていると、背後から聡史の声がした。

彼を起こさないように、音をたてないようにしていたつもりなのに。
なんて、心の中で小さくため息をつきながら振り返ると、聡史はベッドの上で裸の上半身を起こして、私の事を複雑な表情で見ていた。

「ごめんね、聡史。起こしちゃった?」

「いや。……帰るのか?」

『帰るなよ』
そう言いたげな表情に気づかぬふりをして、私は目を伏せて頷いた。
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