惑溺
 
「明日も仕事だし……」

「そっか」

さっきまで、ベッドの上でひとつになっていたはずなのに。
床の上で服を着る私と、ベッドの上から私を見る聡史。
その距離はこんなにも遠い。

この距離を、聡史も感じ取ってるんだろう。
彼はベッドの上でひとり、ひどく寂しそうに笑った。

「ちょっと待って、服着る。
送るよ」

そう言ってベッドから立ち上がろうとする聡史に、私は慌てて首を振る。

「いいの。大丈夫」

乱れた服のままコートを羽織り、廊下に散らばった荷物をまとめて急いで靴を履く。

早くひとりになりたかった。

あんなに激しく抱き合ったはずなのに私の体は冷たいままで、冷えきって感覚をなくした指先が
どうしようもなく、寂しかった。
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