惑溺
 
ベッドの上で寝返りを繰り返しながらぼんやりと天井を見上げていると、ベッドの下でさっき放り出した携帯電話が鳴りだした。
手を伸ばしてそこに表示された名前を見ると、博美からの着信だった。

手帳、みつかったのかな。
そう思いながら電話に出た途端

『由佳ー!ちょっと聞いてよ!!』

私が声を発する前に、電話の向こうから博美の叫び声が聞こえた。

「な、なに!?どうしたの!?博美泣いてるの?」

『泣いてない!怒ってるの!』

怒ってるのか。どちらにしても、突然叫ぶのはやめてほしい。
心臓に悪いってば。

『アタシ今リョウくんに電話したんだけどさぁ。
もうリョウくん超冷たくて!由佳の忘れた手帳を受け取りたいから会おうって言っても、無理だって言うの!』

「あ、よかった。やっぱり手帳あのお店にあったんだ」

ほっとしてつぶやくと、博美が怒りだした。

『ぜんぜんよくない!!』
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