惑溺
 

「西野がいつも手首につけていた茶色のシュシュが、由佳の物だって事くらい、すぐに気付いたよ。
これでも一応教師だから、生徒の事はいつも見てる」

聡史はシュシュについた雪を払い落としながら、リョウが歩いていった方を振り返った。

絶え間なく降り続ける雪に、リョウの足跡さえ、もう消えかかっていた。


「俺は、もう二度と会わないって言った由佳の事を信じたい」


もう、全てが真っ白だった。
視界に入るもの全てが真っ白だった。



この街の景色も
雲に覆われた空も
目の前の聡史の息も


「由佳。どっちを選ぶ?俺とあいつと」


私の頭の中も……



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