惑溺
「由佳……」
小さくなるリョウの背中と、雪の中で呆然と立ち尽くす私を見た後、聡史は雪に埋もれかけたシュシュを拾いながら、低い声で言った。
「あいつを追いかけたいのか?
そんなに、あいつが好きなのか?」
え……?
どうして私がリョウを好きだって……。
驚く私の目の前に差し出されたのは、見慣れた赤い手帳。
リョウへの想いがたくさん書き込まれた、シンプルな赤い革の手帳。
「これ。玄関に、落ちてたよ」
聡史は悲しげに、震える手で手帳を受け取る私の事を見ていた。
「中は見てない。
でも、わざわざ手帳なんて見なくても、由佳の考えてる事くらいわかる」