惑溺
 

もうこんな時間かぁ。

なにやってんだろ。
ちょっと荷物の整理をしようと思っただけなのに……。




苦笑しながら手元の赤い手帳を見て、三年前のクリスマスイブの日付を、指でそっとなぞった。

すっかり思い出に浸っていた自分。
もう三年も前の出来事なのに、今思い出しても息が詰まるほど鮮明に、あの頃の気持ちが蘇る。

ちょうど三年前の今日、クリスマスイブ。
雪の夜に彼の背中を見送ったまま、あれから一度もリョウに会うことはなかった。
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