惑溺
 

部屋の壁にかかった時計を見上げて時間を確認する。

博美との約束まではまだ少し時間があるけど、もう家を出ようかな。
駅前の大きな本屋で、来年の手帳でも探して時間を潰そう。
三年前の思い出に浸りすぎて、苦しい空気でいっぱいになったこの部屋を出て明るい気分にならなくちゃ。


クリスマスイブにお祝いを兼ねた女ふたりでの食事の約束。
久しぶりに会う博美に、何かクリスマスプレゼントでも選んであげようかな。

そんな事を考えながら、私は三年前の赤い手帳をまた丁寧に包み直し、その想いも一緒に封印するように、箱の中にしまいこんだ。






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