惑溺
 
栓を開け瓶のまま口を付けて飲む。
由佳はそんな俺を見ながらゆっくりとグラスに口を付け、

「美味しい」

幸せそうに呟いた。
三年前、はじめてこのカクテルをだした時も、こんなふうに嬉しそうに笑っていたな。

「ねぇ、リョウ。
これ、なんて名前のカクテルなの?」

タンブラーの中のとろりとした液体を揺らしながら聞く由佳に、意地悪に笑ってみせる。

「教えない」

「やっぱり、教えてくれないと思った」

由佳はどこか嬉しそうに小さく笑った。

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