惑溺

リビングは男の人の部屋らしく雑然としていたけど、インテリアも雑貨もすべてモノトーンで揃えられていた。
色味の無いシンプルで落ち着いた部屋。

入り口を入って左に狭いキッチン。

リビングの右側には壁一面に棚が取り付けられていて、そこには色とりどりのお酒のボトルが整然と並んでいた。

さすがバーテンダーのお部屋。
見た事もないお酒の瓶に、銀色に光るカクテルを作るための道具。
様々な形のグラス。

「すごい、プライベートバーみたい!」

マンションの一室とは思えないその部屋の中に、思わずそう声を上げる。

そんな私を彼は静かに観察するように黒いソファーに座り眺めていた。
その冷ややかな視線に、浮かれていた自分が急に恥ずかしくなる。

なんかやだ。私ひとりではしゃいでるみたい。
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