惑溺
 
本当は、私の事を考えていてくれたのが嬉しくて仕方ないのに。
もっと早く社員旅行の事を言えば良かったって、すごく後悔してるのに。

意地っ張りな私は、口では生意気な事ばかり言いながら
思いっきりリョウに抱きついて、裸の胸に顔を埋めた。

「ふーん。俺が悪いんだ?」

「そう、リョウが悪い。もっと早く言ってよ」

「本当、お前素直じゃないよな」


うんざりしたように言いながら、力一杯抱きつく私をゆっくりとなでる優しい手のひら。

リョウの体の温もりが心地よくて、ついウトウトしそうになっていると

「そういえば、明日の社員旅行って何時から?」

とリョウがたずねてきた。

「ええと、会社に11時集合でそれからバスで温泉に行くの」

ぼんやりしながら答えると、ぐるりと視界が反転した。
< 414 / 507 >

この作品をシェア

pagetop