惑溺
 
ひざ裏に這わせた左手に力を入れて、私の右足を持ち上げる。
黒い瞳は私の方にむけたまま、ゆっくりとリョウが持ち上げた私の右膝に唇を這わせる。

「やッ……」

彼の指先、唇の動きひとつひとつに、敏感に反応する私の身体。
それを楽しむように、黒い髪の間から私の事を観察する彼の視線。

「んん……ッ!」

膝から内腿へ、肌の上を滑ってゆく彼の舌。
ビクッと身体が痙攣するように震えた拍子に、カウンターの隅に置いてあったタンブラーが倒れた。


透明のグラスから、微かに残った琥珀色の液体が、とろりと流れ出す。
それと同時に、甘い魅惑的な香りが鼻腔をくすぐった。


リョウはそれを横目で見ると、ふっと短い息を吐きながら目もとだけで小さく笑った。

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