惑溺
「4年前?」
「そう、4年前の今日。由佳が初めてこの店に来た日」
そう動いた彼の唇に、どきんと胸が締め付けられた。
グラスを持つ手が微かに震えた。
「あの日もカウンターの中にいる俺を、その表情でじっと見つめてた」
「……うそ」
なんだろう、どうしようもなく胸が苦しい。
切なさとも悲しさとも違うけれど、胸が痛いほどに締め付けられて
息もできないくらい、苦しい。
「4年前の今日、ここで出会った。
由佳はカウンターの端の席に座ってた。
……覚えてる?」
覚えてるよ。
忘れられるはずがない。