惑溺
「なんで、私が、リョウさんの、部屋の掃除なんか、しなきゃならないんですか」
彼の魅力にぐらりと傾きそうになる私に喝を入れるように、わざとぶっきらぼうな声で言葉を区切りながらそう言うと
「別に嫌ならいいよ。
親切に手帳を預かってくれた相手に苦手なプリンを渡して困らせて、少しも心が痛まないって言うなら、さっさと帰っていいよ」
綺麗な黒い瞳を細め、私をいたぶるように意地悪に微笑んだ。
この人本当に性格悪い……!!
悔しいけど、こんな事を言われたまま家に帰っても、きっといつまでもイライラするだけだ。
私はわざとらしいくらい大袈裟なため息をついて言った。
「わかりました。掃除、手伝います」
「よかった。助かるよ由佳」
耳元でその色気のある声が、私の名前を呼んだ。
不意打ちで鼓膜を震わせたその響きに、勝手に体がぞくりと反応した。