taitoru
◆ ◆ ◆

また私の勝ちだね!元気良く、悪魔は笑う。どうせ、先程言っていたお得意の読心術とやらで私のカードをみているのだろうが。これで負けても別に悔しくない……と思いたいのに、残念なことに私にはそんな余裕な気持ちはなかった。
「もう一回、ね?」と必死に頼み込んでやれやれと云った表情でトランプをシャッフルする。そんな彼をみて、はっとしたように気がついたことがあった。
「貴方は何者なの?」悪魔以外に、詳しく正確に教えて、と次々と疑問をぶつけてみる。トランプを配り始めた彼は少し吃驚としたような眼をしてまた、にっこりと笑う。トランプを配るのを少しの間、やめた。
うん、仕方ないね、と呟いてから、トランプを再び配り始めて眼を瞑る。
「…なんていうのかな、私は、悪魔だよ。愚かな人間の欲望が塊になって生まれてしまった、哀れな悪魔」なんとなく彼の雰囲気は伝わった。先程までにこにこと活気良く動いていた眉が、ハの字に下がってきているから。
「私はモノクロの世界で生きてきた。真っ暗で、たまに光が見える、…みたいな感じかな。少し前に、光を見つけたんだ」
悪魔の紫色の眼は、たまに移る銀色がチラチラと輝いた。



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