お嬢と使用人
「元々優しいオヤジだったけど、やたらとあんたを猫可愛がりするなぁと思ってたら……」
「なんでそんな大事なこと、今まで黙ってたの!?」
「私も去年の今頃、お母さんが遺言書持ってきて知ったのよ。
心の準備しとけ、って。
もう勝手に手続きまで済ませてて……」
大好きなおじいちゃん。
優しくて、色々教えてくれて、いろんなところに連れてってくれて。
だからできるだけ望みは叶えたいけど……。
「頼子おばちゃんとこは?3つ年上のお兄ちゃんいたじゃない。
美恵おばちゃんとこも、男の子が二人もいるのに」
「あんたも知ってるでしょ、オヤジの七回忌を最後に疎遠になってんの」
……そうだった。
元々お母さんのお姉ちゃんたちは、田舎なおじいちゃんちをすごく嫌っていたらしい。
遺産相続もそこそこに、おばあちゃんのことも家のことも、
みーんなお母さんに押し付けたんだ。
そんな性格のおばちゃんたちに、おじいちゃんはなんの期待もしていなかったようだ。
「……もう私しかいないんだよね……。
あの家がなくなるのは嫌だし、おじいちゃんのことは大好きだし……」
それに、おじいちゃんが死んでしばらくして、最後の使用人の人が辞めてからは……
おばあちゃんは一人暮らし。
おばあちゃんのこともいいかげん心配だし……。
私は一晩中考えて、答えを出した。