お嬢と使用人
「この部屋の向かいが、俺の部屋」
……あぁ、
夢じゃないのね。
少し開いたドアから覗く、落ち着いた色合いの部屋。
家具が揃っていて、やっぱりこの人と住むんだって改めて実感する。
「俺のことは"将大"でいいからね。婚約者兼使用人なんだから、年上だとかは気にしないで」
そう言ってにっこりする将大……くんは、私の手を握った。
「……はぁ」
私はため息混じりの返事しかできないくらい、彼の笑顔に見とれていた。