ランデヴー II
「さ、坂下さん……!」
11月も終盤に差し掛かろうかという頃。
カタカタと必死で会議資料を作っている私の隣の席から、弱々しい声が聞こえてきた。
ちらりと目を向けると今村さんが今にも泣きそうな顔で受話器を握り締め、私の顔を見ている。
心の中で小さく溜息を吐きながらもそれを悟られないように、「どうしたの?」と極力優しい声色で尋ねた。
「あの、販売戦略部の野本さんにイニシャルの生産数で文句言われてて……あの、代わってもらえますか……?」
おどおどと言われ、がっくりと肩を落としたくなる。
もう1年もここでやっているのだから、そろそろそれくらい自分で対応できるようになって欲しい。
そう思うのは、間違っているだろうか。